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初診日の証明が取れないときにどうすれば良いか

Ⅰ.はじめに

今回のブログでは、初診日 の証明方法と初診日の証明が取れなかったときにどうすれば良いかについてご紹介いたします。

ブログを読まれる方の中には、初診日 について、役所や年金事務所で「第三者証明」を準備するように言われたけれど、当時の状況を知っている人が誰もいない、また「第三者証明」は用意できても、当時の診察券など証拠となるものがないので、どうしたらいいのかわからないなど、お困りの方もおられると思います。

そうした方は、最初に「Ⅲ.初診日の証明方法について」の「3.5年以上前に医療機関が作成した資料に本人が申し立てた初診日の記録がある場合」からお読みください。初診日を証明することができる手がかりになるかも知れません。

3.5年以上前に医療機関が作成した資料に本人が申し立てた初診日の記録がある場合を先に読む → ここをクリック!

Ⅱ. 初診日 は障害年金の申請できわめて重要な日です

障害年金を受給できるかどうかは、次の3つの要件で決定します。そしてこの3つの要件の判定にはすべて初診日がもとになります。

① 初診日 に加入していた保険は何か(国民年金か厚生年金保険か)
② 初診日 の前日の時点で過去を振り返ってみて保険料の納付がきちんとされていたか
③ 初診日 から原則1年6カ月の時点(障害認定日)で、どの程度の障害の状態にあるか

この3つの要件で、障害年金が受給できるか、どんな障害年金が受給できるかが決まります。

初診日 は障害年金の申請において、なくてはならない日なのです。

Ⅲ.初診日 の証明方法について

1.初診日の証明方法の基本

初診日 は、障害年金を請求する方が、初診の医療機関にカルテにもとづいて作成してもらった「受診状況等証明書」により証明します。

ところが、長い年月をかけ進行する病気の場合、何か所も転院されて最初に受診した病院にすでにカルテが残っていないことや(カルテの法定の保存期限は5年間)、廃院になってしまい初診の証明(「受診状況等証明書」)が入手できないことがあります。

そこで、このように初診の医療機関で「受診状況等証明書」が取得できない場合は、「第三者証明」と「参考となる他の資料」により初診日を証明します。

ここまでが、初診日の証明の基本的な考え方になります。

また、初診日 の証明の方法は、

① 傷病が生来の知的障害のとき →下図ケース1
② 初診日が20歳以降のとき     →下図ケース2
③ 初診日が20歳前のとき    →下図ケース3,4

によって異なります。

ご自身がどのケースにあてはまるか、次のフロー図でご確認ください。

初診日証明要否①
初診日証明要否②
初診日証明要否③

初診日 が20歳前で20歳前障害基礎年金の請求のときは、平成31年2月1日から、2番目以降に受診した医療機関の受診日により、障害認定日が20歳到達日以前であることが確認でき、かつ、その受診日前に厚生年金等の加入がない場合は、最初に受診した医療機関の初診日 証明の添付が不要となりました。

初診日証明要否④

2.ケース毎の 初診日 の証明方法

ケース毎にどのように初診日を証明するか順に説明いたします。

ケース1 生来の知的障害のケース

(1)生来の知的障害は初診日の証明は不要

生来(生まれつき)の知的障害の場合は 初診日 が出生日とされますので、初診日を証明する書類の提出は不要です。一方で、発達障害の場合は、初めて医師の診療を受けた日が初診日とされます。

ケース2 初診日 が20歳以降のケース

(1)「受診状況等証明書」の取得

初診日 を証明するためには、初診の病院で「受診状況等証明書」を取得する必要があります。

ただし、初診から変わらず現在まで同じ病院に通院されている場合には「受診状況等証明書」を取得する必要はありません。診断書への記載で証明されるからです。

初診日証明の図01
初診日証明の図02

(2)初診日 が20歳以降で、初診の証明(「受診状況等証明書」)を取得できなかったとき

初診のA 医院で「受診状況等証明書」を取得できなかったときは、 初診日 を証明するために、「第三者証明」と「参考となる他の資料」の提出が必要です。「参考となる他の資料」は「第三者証明」を客観的に裏付けるものと理解してください。

さらに、初診の病院の「受診状況等証明書が添付できない申立書」をご自身で作成し、B医院で「受診状況等証明書」を取得します。

初診日証明の図03

(3)「第三者証明」、「参考となる他の資料」、「受診状況等証明書が添付できない申立書」について

①「第三者証明」

第三者証明は、三親等以内の親族を除く第三者が、ア、イ、ウのいずれかの状況を申し立てて証明する書類で、2通以上必要になります。

ア 初診日頃の受診状況を直接見て知った受診状況

イ 本人や本人の家族等から、初診日頃に、初診日頃の受診状況を聞いていた場合、その聞いていた受診状況

ウ 本人や本人の家族等から、請求時から概ね5年以上前に、初診日頃の受診状況を聞いていた場合、その聞いていた受診状況

なお、ウの場合において、聞いていた時期が請求時から概ね5年以内の場合は、基本的に認められませんのでご注意ください。

②「第三者証明」を医師や看護師が作成した場合について

初診の医療機関でカルテが廃棄済等で初診日の証明が得られないことがあります。その場合、初診日頃に受診した医療機関の担当医の先生や看護師さんから第三者証明が得られる場合には、「初診日について参考となる他の資料」がなくとも、「第三者証明」のみで初診日が認められます。また、1通のみで認められることになっています。担当医の先生や看護師さんは、初診日頃の受診状況を直接見て知っているためです。

ただし、担当医の先生や看護師さんによる第三者証明であっても、受診状況を直接把握できない立場であった方以外は、通常の第三者証明と同じ扱いになりますのでご注意ください。

③ 第三者証明に記載の必要な項目

・第三者について
氏名 / 住所 / 電話番号 / 請求者との関係(初診日頃の関係又は受診状況を聞いた頃の関係)

・請求者の初診日の医療機関の受診状況
傷病名 / 初診の時期 / 医療機関について(名称・所在地・診療科)

・第三者から見た請求者の初診日の頃の状況
発病から初診日までの症状の経過 / 初診日頃における日常生活上の支障度合い / 医療機関の受診契機 / 医師からの療養の指示など受診時の状況 / 初診日頃の受診状況を知り得た状況 など

④「参考となる他の資料」について

「参考となる他の資料」は、診療科や受診日が記載されている診察券や入院記録など、初診日について、客観的な証拠となり「第三者証明」を裏付ける資料のことです。

初診日を確認するうえで、次のものも参考資料として取り扱うこととされています。

① 身体障害者手帳・療育手帳、精神障害者保健福祉手帳
② 身体障害者手帳等の申請時の診断書
③ 生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書
④ 交通事故証明書
⑤ 労災の事故証明書
⑥ 事業所等の健康診断の記録
⑦ インフォームド・コンセントによる医療情報サマリー
⑧ 健康保険の給付記録(健康保険組合や健康保険協会等)
⑨ 次の受診医療機関への紹介状
⑩ 電子カルテ等の記録(氏名、日付、傷病名、診療科等が確認されたもの)
⑪ お薬手帳、糖尿病手帳、領収書、診察券(可能な限り診察日や診療科が分かるもの)
⑫ その他(例えば、交通事故による請求で事故証明が取得できない場合、事故のことが掲載されている新聞記事を添付するなど。)

⑤ 受診状況等証明書が添付できない申立書

 資料名の通り、「受診状況等証明書」が入手できず年金請求時に添付できないときに用意する資料で、年金の請求者が自身で作成します。

記載内容は、傷病名 / 医療機関名 / 受診期間 / 受診状況等証明書が添付できない理由 等です。

ケース3 初診日が20歳前で、次の条件をみたす時

(1)初診日が20歳前で一定の条件をみたすとき

2番目以降に受診した医療機関の受診日から、障害認定日が20歳到達日以前であることが確認でき、かつ、その受診日前に厚生年金等の加入期間がないことが確認できるとき

この場合は、初診日を証明する書類の提出は不要です。

初診日証明の図04

ケース4 初診日が20歳前で、ケース3の条件をみたさない時

(1)初診日が20歳前で一定の条件をみたさないとき

ケース3の条件をみたさない、2番目以降に受診した医療機関の受診日から、障害認定日が20歳到達日以前であることが確認できないときや、確認できる受診日前に厚生年金等の加入期間があるとき、または、障害認定日が20歳過ぎのときは、初診日を証明する書類の提出が必要です。

初診日証明が必要なとき

(2)初診日が20歳前で、ケース3の条件をみたさない時の初診日を証明する書類について 

① 第三者証明による初診日の確認について

20歳前に初診日がある障害基礎年金の請求に当たり、初診日の医証(医療機関の証明のある資料)が得られない場合においては、請求者が20歳前に発病し、医療機関で診療を受けていたことを明らかにする第三者証明により、請求者申立ての初診日を認めることができることとされています。

② 第三者証明は、基本的に次のアからウのいずれかに該当するもの。

ア 第三者証明を行う者が、請求者の初診日頃又は20歳前の時期の受診状況を直接的に見て認識していた場合に、その受診状況を申し立てるもの

イ 第三者証明を行う者が、請求者や請求者の家族等から、請求者の初診日頃又は20歳前の時期に、請求者の初診日頃又は20歳前の時期の受診状況を聞いていた場合に、その聞いていた受診状況を申し立てるもの

ウ 第三者証明を行う者が、請求者や請求者の家族等から、請求時から概ね5年以上前に、請求者の初診日頃又は20歳前の時期の受診状況を聞いていた場合に、その聞いていた受診状況を申し立てるもの

③ 20歳前に厚生年金等に加入していた者の取扱いについて

20歳前に初診日がある場合であって、当該初診日が厚生年金等に加入していた期間である場合の第三者証明の取扱いは、障害厚生年金等の支給の対象となることから、「第三者証明」と「その他の資料」の提出第が求められます。

ここから読み始める

3.5年以上前に医療機関が作成した資料に本人が申し立てた初診日の記録がある場合

ここまで読まれて、または「はじめに」を読まれて、この項からお読みになる方は、初診日が証明できずにお困りの方が多いかと思います。

一度、この項をお読みいただいた上で過去に通院された病院にご確認いただけるようお願いします。

平成27年9月28日 厚生労働省から、次の通り、障害年金の請求から5年以上前に、本人が申し立てた初診日が医療機関が作成した資料に残っている場合、初診日として認めることができると通知されています。

=== ここから抜粋 ====⇒

障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて (平成27年9月28日)(年管管発0928第6号)  より

第3 その他の初診日の取扱いについて

1.請求者の申立てに基づき医療機関が過去に作成した資料の取扱いについて

請求の5年以上前に医療機関が作成した資料(診療録等)に請求者申立ての初診日が記載されている場合には、初診日と認めることができることとする

また、当該資料が、請求の5年以上前ではないが相当程度前である場合については、請求者申立ての初診日について参考となる他の資料とあわせて初診日を認めることができることとする。ただし、この場合に参考となる他の資料としては、診察券や入院記録など、請求者の申立て以外の記録を根拠として初診日を推定することが可能となる資料が必要であり、請求者又は請求者の家族等の申立てに基づく第三者証明は含まれないものとする。

⇐==== ここまで抜粋 ======

ここで書かれているのは、障害年金の請求書を提出する5年以上前に、ご本人が病院で、その病気でいつから病院にかかっているか話した内容が、カルテなど医療機関の作成した資料に残っていれば、それが初診日の証明になるということです。

この病院は初診の病院でなくても構いません。2番目以降の病院のどこの病院でも5年以上前の記録であれば構わないのです。

普段、診察時にご本人がお話されたことは、担当医の先生はカルテに書きとどめていますし、また、私は話したことがないと思われる方でも、病院に最初に行かれた時に問診票を書かれているはずです。その問診票には、かならずいつ頃から調子が悪くなったか、いまの病気で最初に病院にかかったのはいつか、また、その病院名等も記載しているはずです。

病院に障害年金の請求で初診日の証明を探している旨を伝えて、カルテや問診票に初診日の記録が残っていないか確認してみる価値はあります。

せっかく確認いただくのですから、その際には前医からの紹介状が残っていないかも確認してください。

紹介状には発病以降の経過の中で初診についても書かれていることが多くあります。

このようにして調べた結果が「〇年〇月頃」や「〇年の春ごろ」のように日付けまで特定されないケースは多々あります。そのようなときはどうなるのか次の項で説明いたします。

4.「初診日」で日付が特定されない場合

初診日は原則、年月日まで特定されなければなりませんが、年月や季節まで特定されれば認められるケースがあります。

① 「年月」までしか特定できない場合

年月まで特定できるが、日が不明の場合は、その月の月末が初診日とされます。ただし、その月の中で国民年金と厚生年金に加入している場合には、月末が初診日とされません。この場合、日付を「その他の資料」で証明することが必要になります。

医療機関を受診し、その月に厚生年金の事業所を退職、国民年金に加入したようなケースが該当します。

② 「〇年ごろ」と年までしか特定できない場合

医証に「〇年ごろ」と年までしか記載されていない場合、その医証(医療機関の証明のある資料)のみでは初診日は認められません。

この場合、その他の資料で証明が必要になります。

③ 「〇年の春ごろ」のように季節まで記載されている場合

以下の日付けを初診日として認めることとされています。

・冬:2月末日 
・春:5月末日 
・夏:8月末日 
・秋:11月末日

①、③、いずれのケースでも、その期間内に国民年金と厚生年金の期間が混在している場合には、初診日に加入していた保険が国民年金か厚生年金かで受給できる障害年金の内容が異なるため、この条件だけでは認められません。「第三者証明」や「その他の資料」等で証明が必要になります。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

いかがでしょうか、2回にわたり初診日についてご紹介させていただきましたが、初診日を証明するのが難しいことはよくあります。自分ひとりではどうしようもないと思われたときは、ぜひ社労士にご相談ください。

初診日については、他にも

「初診日はいつになるのか」
「20歳前傷病の初診日証明の簡素化について」 
で紹介しておりますので、下記をクリックしてご覧ください

線維筋痛症、脳脊髄液漏出症の初診日のブログは、こちらです。

線維筋痛症、化学物質過敏症、慢性疲労症候群、重症筋無力症の初診日の取り扱いについて

脳脊髄液漏出症の初診日について

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