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障害年金受給者(精神障害)の就労状況

1.東京地裁 不支給処分取消の判決

最近、精神障害の方が障害年金を申請したところ「継続して被保険者であった」ことを理由のひとつとして不支給になったと、相談を受けました。
「継続して被保険者であった」とは、初診日以降も会社を退職せずに就労が続いていたことを意味しています。

4月20日に東京地裁で行われた裁判で、下記の判決がありました。

上記の相談にも内容が関連し、気になりましたのでご紹介させていただきます。

― 障害年金450万円支給へ 東京地裁が命令、国が敗訴 ―

 就労していることなどを理由に国の障害年金の支給が認められなかったのは不当だとして、発達障害と軽度の知的障害がある埼玉県内の男性(25)が不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は20日までに国の決定を取り消し、障害基礎年金2級(月約6万5千円)の支給を命じた。国は控訴せず、判決が確定。男性には今後の年金のほか、未支給分の計約450万円が支払われる見通し。

 代理人の関哉直人弁護士は「就労が続いていると障害年金が支給されないケースがあるが、支援の状況を丁寧に判断すべきで、判決はその点を明確に指摘した」と話している。

(出典:R4/4/20(水) 15:43配信 共同通信)

関哉直人弁護士の指摘の通り、精神障害の場合、傾向として、退職せずに、または休職せずに働き続けていた場合には、支給が認められないケースがあるように思えます。

2.障害認定基準(精神の障害)と就労について

障害認定基準(精神の障害)には、

「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。」

とされています。

ここでは、働いている事実だけで、日常生活能力が向上したと判断してはならないことを明確にしています。

重要なのは、どんな仕事をしているか、労働日数や労働時間の状況、安定した状態で就労できているか、職場でどんな援助をうけているか、またはどんな援助を必要としているか、周りの従業員とのコミュニケーションの状況は適切にできているかなどを具体的に確認して、判断することとされていることです。

どんな仕事をしているかは、自分で判断して行う必要性のある仕事か、それとも、指示に従い、判断を伴わずにできる仕事か、周囲と一緒に行う必要性のある仕事か、単独で行える仕事か、顧客対応の必要性の有無などがポイントになると考えます。

安定した状態で就労できているかは、突発の休み、遅刻、早退などはないか、また、不眠、吐き気、嘔吐、腹痛などにより、出退勤に影響はないかなどが考えられます。

どんな援助をうけているかは、人事制度上の会社の配慮のほか、きめ細かな指導・援助、送迎、また通院日の管理など日常生活を含めた援助も考えられます。

他の従業員との意思疎通の状況では、周囲とコミュニケーションを取りながら仕事ができているか、コミュニケーションは挨拶にとどまるのか、仕事上のやり取りができるか、いじめや自らの暴言などで職場内で孤立してしまったりしていないかなどが考えられます。

これらは、どれも職場での日々の具体的な出来事です。

障害年金の申請の際には、これらの就労状況を診断書に記載していただくのはもちろん、その詳細を病歴・就労状況等申立書に書き込み、障害年金の審査の際に判断の根拠にしてもらうことが重要です。

3.障害年金受給者の就労状況について

それでは、障害年金を受給している方の就労状況は実際どのような状況になっているのでしょうか。

「年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)令和元年」によると、

障害年金受給者 209万6千人に対して、仕事のある方は71万4千人。障害年金受給者全体の34%にあたります。

このうち、精神障害の方についてみると、障害年金受給者72万5千人に対して仕事のある方は20万5千人。精神障害で障害年金を受給されている方の28%にあたります。常勤の会社員や公務員で働かれている方は、1万6千人で、精神障害で障害年金を受給している方のわずか2%にすぎません。

低い数字の背景には、精神障害の方が常勤の仕事に就くのが難しい面があるのはもちろんのこと、常勤で継続して働いていると障害年金の受給が厳しいこともあるように思えます。

障害年金の申請にあたっては、具体的な就労状況を診断書、病歴就労状況等申立書に書き込み、判断していただくことが重要となります。

障害年金受給者就業状況
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