障害年金と傷病手当金について
目次
1.はじめに
さかのぼって障害年金を受給すると傷病手当金と受給期間が重なり、傷病手当金の返納が必要になることがあります。今回のブログでは、傷病手当金はどの程度返納が必要になるのか、傷病手当金、障害年金の図解で説明します。
2.傷病手当金について
健康保険の傷病手当金は、①療養のため、②働けないときに、③待機完成後(3日連続の休業後)(年次有給休暇、公休日を含みます)に、支給が開始された日から、1年6カ月の期間、支給されます。
3.傷病手当金は退職後ももらえる
傷病手当金は退職してからも、もらうことができます。
ただし、退職後にもらえるのは、
① 退職前に傷病手当金をすでに受給している場合か、
② 退職日以前に3日連続の休業の条件を満たし、4日目の休業をしている場合
に限られます。
なお、退職後に傷病手当金を受給するためには、健康保険の被保険者の資格を喪失する前日(退職日)まで引き続き1年以上被保険者であることが必要です。
もし、3日連続の休業をとり待機期間が完成しても、傷病手当金が受給できる4日目の休業をしていないと、傷病手当金は受給できません。
また、退職日に片付けや挨拶のために出社して、働くことが可能とされると傷病手当金は受給できなくなるので注意してください。
退職の前には、必ず、加入している健康保険組合にご相談されることをお勧めします。
4.傷病手当金を受給できる期間は1年6カ月
傷病手当金は受給を開始してから1年6カ月の間、受給できます。
この期間が過ぎた後は受給できません。
5.障害年金と傷病手当金の両方の支給を受けられるとき
障害年金は認定日請求をすると、障害認定日の翌月から障害年金が支給されます。請求が遅れた場合でも、請求日から最大5年間(ただし認定日を超えません)はさかのぼって支給を受けることができます。
すると、下の図のように、障害年金の支給を受ける期間の一部が、健康保険の傷病手当金の支給を受けていた期間と重なることがあります。
原則、傷病手当金の支給を受ける方が、同じ病気やケガが原因で障害厚生年金の支給を受けるときは、傷病手当金は受けることはできません。傷病手当金も障害年金も同じ所得保障を目的としたものだからです。
ただし、傷病手当金の額が障害年金の額(360で割って日額に換算した金額)よりも多いときは、傷病手当金は障害年金との差額 A(下図参照) が支給され、障害年金(障害厚生年金、障害基礎年金)Bは全額が支払われます。
すでに傷病手当金の支給を受けている場合、先に支給を受けた傷病手当金の一部を健康保険組合に返納することになります。
返納する部分は、下図B の障害年金(障害厚生年金、障害基礎年金)の日額相当分の重なって受ける期間の日数分です。
6.傷病手当金を返納する場合の計算例
次の例で、いくら傷病手当金を返納することになるか試算してみます。
傷病手当金を受給後に障害年金を受給した。 双方の支給期間には重なる期間が、100 日 分ある。 傷病手当金の金額(日額)は 8,000円 障害厚生年金と障害基礎年金の合計額が180万円 |
この場合、傷病手当金と障害年金の支給が重なる期間 100日分の重なって受ける金額を、健康保険組合に返納することになります。
a.傷病手当金の金額(日額) 8,000円
b.障害年金(日額) = 180万円 ÷ 360日 = 5,000円
傷病手当金の金額(日額) 8,000円 > 障害年金(日額) 5,000円 なので、
答.傷病手当金返納額
= 5,000円 × 傷病手当金 b期間の支給日数 100日 = 50万円
7.傷病手当金返納後の例の図
上記の例で返納後のイメージは下記図のようになります。
傷病手当金を日額で 8,000円もらっていた分に対して、同じ所得保障を目的とした障害年金 5000円を上乗せしてもらうことはできないので、重なる期間分の重なる金額を、健康保険の傷病手当金に返納するということになります。
実際には、障害年金を受給すると、健康保険組合から傷病手当金の返納について案内が送付されてきますので、それに従って返納してください。
( 図の金額は日額換算 )
関連記事
最近のブログを紹介します。