令和2年度決定分 障害年金業務統計について
目次
1.はじめに
令和3年9月発表 令和2年度決定分「障害年金業務統計」が、日本年金機構のホームページで公表されていますので、その中から主な数字だけ紹介させていただきます。
障害年金の新規裁定と再認定にかんする決定件数をまとめた「障害年金業務統計」が公表されるのは令和2年9月に令和元年度決定分が公表されたのに続いて2回目です。
データだけで詳しい解説をまたないと不明な点もありますが、公表数字をもとにグラフ化し実態をご紹介します。
データの紹介にあたり、診断書種類別の件数をもとにしています。1人で複数の診断書で請求をしている場合もあり、請求人毎の決定件数とは一致しないことをご了承願います。また、件数につきましては、新規裁定を対象にし、再認定を含んでいないこともご承知おき願います。
なお、「障害年金業務統計」が公表されることになった経緯については過去のブログ “障害基礎年金認定における地域差の縮小と「障害年金業務統計」の公表について” で紹介しておりますので、参考にご覧ください。
当統計で使用されている用語の解説 ○障害基礎年金の決定件数 障害基礎年金のみ受給資格がある者に係る決定件数。 ○障害厚生年金の決定件数 障害厚生年金の受給資格がある者に係る決定件数。 障害厚生年金の受給資格がある者が1級・2級である場合は、障害基礎年金及び障害厚生年金を受給することになるが、この場合は、一括して障害厚生年金の決定件数として計上している。なお、障害厚生年金の新規裁定の決定件数の中には、障害手当金に係る決定件数も含まれている。 |
令和2年度で新たに支給が決定した障害年金の件数は、
障害基礎年金 70,439件 62%
障害厚生年金 42,507件 38%
合計 112,946件 100%
2.診断書種類別 障害年金支給決定件数
請求のあった診断書の種類別に、内訳を表示したのが次のグラフになります。
精神障害・知的障害が約7万2千件で全体の64%、肢体が約2万件で18%を占め、この2種類で全体の8割を超えています。
3.診断書種類別 障害年金支給決定件数 障害基礎、障害厚生別
次のグラフは、上記の診断書種類別に障害年金の支給が決定した件数のグラフを障害基礎年金、障害厚生年金に分けて表示したものです。
全体では障害基礎年金が62%、障害厚生年金が38%の構成になっています。
全体の64%を占めていた精神障害・知的障害についてみると、そのうち、障害基礎年金が76%を占めています。
令和2年度 診断書種類別 障害基礎・障害厚生 支給決定件数(単位:件)
診断書種類 | 障害基礎 支給決定 件 数 | 障害厚生 支給決定 件 数 | 合 計 | 比率 |
精神障害・知的障害 | 54,641 | 17,522 | 72,163 | 64% |
肢体 | 8,714 | 11,661 | 20,375 | 18% |
腎疾患・肝疾患・糖尿病 | 2,868 | 4,193 | 7,061 | 6% |
血液・造血器・その他 | 929 | 3,134 | 4,063 | 4% |
循環器疾患 | 397 | 2,843 | 3,240 | 3% |
聴覚等 | 1,461 | 1,452 | 2,913 | 3% |
眼 | 1,254 | 1,208 | 2,462 | 2% |
呼吸器疾患 | 175 | 494 | 669 | 1% |
合計 | 70,439 | 42,507 | 112,946 | 100% |
比率 | 62% | 38% | 100% |
4.障害基礎年金 支給決定率
次に請求件数に対して、支給が決定された件数の率を診断書の種類別にみてみます。
まずは、障害基礎年金についてみましょう。
障害基礎年金全体では、請求された件数の内、89%が支給決定されています。
決定件数の多かった精神障害・知的障害は請求に対して92%が支給決定されています。
一方、血液・造血器・その他は60%、呼吸器疾患は59%、循環器疾患は41%と支給の決定率が低い結果となっており、結果として、障害認定される難しさが想定されます。
なお、血液・造血器・その他の診断書は主にがん、呼吸器疾患の診断書は肺結核、じん肺、気管支喘息、慢性気管支炎、肺繊維症など、循環器疾患の診断書は主に心臓の障害の請求に使用されます。
障害基礎年金 請求された件数に対してどれだけ支給決定されたか
令和2年度障害基礎年金支給決定率 診断書種類別(単位:件、%)
診断書種類 | 支給決定 件数 | 不支給決定 件数 | 合 計 | 支 給 決定率 |
精神障害・知的障害 | 54,641 | 4,501 | 59,142 | 92% |
肢体 | 8,714 | 1,889 | 10,603 | 82% |
腎疾患・肝疾患・糖尿病 | 2,868 | 469 | 3,337 | 86% |
聴覚等 | 1,461 | 192 | 1,653 | 88% |
血液・造血器・その他 | 929 | 623 | 1,552 | 60% |
眼 | 1,254 | 161 | 1,415 | 89% |
循環器疾患 | 397 | 572 | 969 | 41% |
呼吸器疾患 | 175 | 123 | 298 | 59% |
計 | 70,439 | 8,530 | 78,969 | 89% |
5.障害厚生年金 支給決定率
障害厚生年金の支給決定率は、全体で93%、診断書の種類別にみても87%~95%の範囲に収まっています。
障害厚生年金 請求された件数に対してどれだけ支給決定されたか
令和2年度障害厚生年金支給決定率 診断書種類別(単位:件、%)
診断書種類 | 支給 決定件数 | 不支給 決定件数 | 合 計 | 支 給 決定率 |
精神障害・知的障害 | 17,522 | 1,258 | 18,780 | 93% |
肢体 | 11,661 | 606 | 12,267 | 95% |
腎疾患・肝疾患・糖尿病 | 4,193 | 331 | 4,524 | 93% |
血液・造血器・その他 | 3,134 | 478 | 3,612 | 87% |
循環器疾患 | 2,843 | 185 | 3,028 | 94% |
聴覚等 | 1,452 | 74 | 1,526 | 95% |
眼 | 1,208 | 111 | 1,319 | 92% |
呼吸器疾患 | 494 | 77 | 571 | 87% |
計 | 42,507 | 3,120 | 45,627 | 93% |
6.県別支給決定率(障害基礎年金)
障害基礎年金の支給決定率を県別にみると、82.3%~93.9%の範囲に分布しています。
7.県別支給決定率(障害厚生年金)
障害厚生年金の支給決定率を県別にみると、91.3%~96.9%の範囲に収まっています。
令和2年度のデータについては解説版が出ておりませんでしたので、主要な数値のみ紹介させていただきましたことをご了解ください。
なおデータは、
「日本年金機構ホームページ 主要統計 参考
障害年金業務統計(令和2年度決定分)(PDF 612KB) 」
にもとづいております。
昨年から業務統計が公表開始されるようになった背景などにつきましては、以前のブログをご参照願います。
障害基礎年金認定における地域差の縮小と「障害年金業務統計」の公表について
最近の投稿についてもご覧ください。